日本野鳥の会が発行するワイルドバード・カレンダーに
掲載されている野鳥について紹介します。
5月の鳥は、オオルリです。
撮影:小池 孝育/撮影地:北海道
桜の花が散って木々の若葉がまぶしい季節になりました。
みなさんはこれからの初夏のバードウォッチングのフィールドとして、どんな場所へ
行きたいですか?
私は、どちらかというと海辺や干潟のような平地よりも高低差のある深い丘陵地へ行
くことが多いです。自分の家から気軽に行ける海辺や干潟が近くにないこともありま
すが、起伏がある土地の方が、歩くことを三次元で楽しめるような気がするからで
す。
このような場所でつい探してしまう鳥がオオルリです。同じ夏鳥であるキビタキと同
様、この時期の丘陵地の中で1、2を争うスターですね。オオルリは、キビタキに比
べて高い樹のこずえでさえずることが多いため、近くで見られないという印象があり
ます。地上から高木のてっぺんを見ようとすると遮っている障害物が多くなるのでど
うしても鳥との距離が遠くなってしまうのでしょう。だからこそ、オオルリは多くの
バードウォッチャーにとってあこがれの鳥なのかもしれません。
この時期のオオルリで鮮明に覚えているのは、30年ほど前、ある自然観察施設に勤
務していたときに、公園の入り口の郵便受けのそばのなんてことのないすき間で営巣
していたことです。そこは、深い谷筋の入り口で、道路からほんの10mほど中に入っ
た場所でした。すき間にはコケが敷き詰められていて、まぎれもなくそこがオオルリ
の巣であることを示していました。毎朝新聞を取りに行ったり、郵便物を取りに行っ
たりするたびに横目でちらっと様子を伺うのが日課でしたが、結局その場所での繁殖
はうまくいかず、途中で放棄してしまいました。今思えば、郵便受けの使用をやめ
て、なるべく邪魔しないように工夫した方がよかったかなと後悔しています。
近年、カメラの性能が向上したことで野鳥の撮影を趣味とする方が増えてきまし
た。SNSによって情報が広まることで、人が集まり、繁殖期の野鳥を追いかけまわし
て繁殖を妨害してしまう事例が増えています。
オオルリはたまに、「エッこんなところで?」という場所で営巣していることもありますが、
そんなときはできるだけ近寄らずそっとしておいていただければと思います。