日本野鳥の会が発行する、ワイルドバード・カレンダーに掲載されている野鳥について紹介します。
2026年11月の鳥は「ミヤコドリ」です。
撮影:服部 佐次/撮影地:三重県
ミヤコドリは、日本では秋から冬にかけて、海岸や河口の干潟、砂浜などで見られます。見られる場所は局所的で、東京湾奥部の海岸などでは比較的よく見られますが、全国的にはまれな鳥です。
全長は約45cm。白と黒の体に赤くて太いくちばし、ピンク色の足をもち、初めて見た人でも見間違えることがないほど個性的な姿をしています。
探鳥会で、ミヤコドリやユリカモメが観察できたときに、案内役がよく話すエピソードがあります。それは、平安時代に書かれたとされる歌物語『伊勢物語』に登場する「みやこどり」は、ユリカモメのことである、という話です。
『伊勢物語』では、墨田川を渡るときに「白い鳥で、くちばしと足が赤く、シギくらいの大きさで、水の上を泳ぎながら魚を食べている」のを見た主人公が、船頭に鳥の名前を聞いたときに「みやこどり」と答えた。そこで、「なにしおはば いざこととはむ みやこどり わがおもふひとは ありやなしやと」という和歌を詠んだと書かれています。この鳥は、現在の標準和名で指すところのミヤコドリではなく、ユリカモメのことといわれています。
探鳥会で何度となく耳にしてきたこの話題について、あらためて調べてみることにしました。観察された時期などを根拠に、これをミヤコドリのことだとする説もあるようですが、ユリカモメ説を大きく推す文献に行き当たりました。それは、日本野鳥の会の創設者・中西悟堂の著作でした。
中西悟堂は、ミヤコドリについて「頭も背も黒く、のども黒い。白いのは腹面だけである」とし、一方、『伊勢物語』に登場する鳥は「白い鳥」と表現されており、この点が大きく異なる、また、ミヤコドリは渚で貝類や甲殻類などを食べるのに対し、ユリカモメは川や水辺で魚を食べる、と述べています。こうした点を根拠として、中西悟堂はミヤコドリ説を退け、「ユリカモメと考えるのが妥当である」と結論付けていました。
この伊勢物語のエピソードはよくきかれる話ですが、物語に登場する鳥が実際にどの鳥を指すのかを考えながら観察するのも、鳥を楽しむ方法のひとつと、あらためて感じました。
先日、東京湾の海辺でミヤコドリとユリカモメを見かけました。きっと彼らは、人間たちが、自分たちを結び付けてさまざまな考えを巡らせていることなど知る由もなく、それぞれの日常を過ごしているのでしょう。そんなことを思いながら眺めていると、とても興味深い光景に見えました。
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