日本野鳥の会が発行するワイルドバード・カレンダーに掲載されている野鳥について紹介します。
5月の鳥は、ウグイスです。
撮影:市川 太将 / 撮影地:北海道
5月になり、東京の郊外にある私の家の周りでは、ウグイスが本格的にさえずり始めました。ウグイスは、さえずりは大変有名ですが、その姿をはっきりと見たことがあるという人は意外に少ないかもしれません。それは藪の中に隠れていることが多く、めったに人前に姿を現さない鳥からです。
ある年の4~6月の間に、どんな場所でウグイスがさえずっているのかを知るために、ウグイスがさえずっていた場所を散歩のついでに地図に落としてみたことがあります。その時の地図を少し加工して、航空写真に表したものが*図1になりますが、上空からの視点で眺めてみると、ウグイスは大体決まった場所で鳴いていたことがわかります。森の中でも特に日当たりのよい林縁の部分や大きな木が倒れた後に生えてきた藪の中でさえずっていました。
美しい声で私たちを楽しませてくれるウグイスですが、実はウグイスが暮らす藪は「見た目が汚い」「防犯上よろしくない」などの理由から、一般の公園利用者からは受けがよくありません。そしてそうした声を受けて、公園管理者により必要以上に藪が刈り込まれてしまい、そのためにウグイスがいなくなったという話もときどき耳にします。
「いつの間にかウグイスの声が聞こえなくなってしまった」ということにならないように、私たちバードウォッチャーは、日ごろから公園管理者とコミュニケーションをとっておき、必要に応じて「藪を刈り残してほしい」とウグイスに成り代わってメッセージを伝える
存在でありたいと思います。
バードウォッチングは、人にとって一見価値がないと思える環境も、生き物の目から見るとかけがえのない環境であるということに気づかせてくれます。皆さんの家の周りにウグイスのさえずりは聞こえていますか?どんな場所にいるのか、一度声を頼りに探してみてください。
*図1 |